会社法第687条(社債券を発行する場合の社債の譲渡)の解説

条文

会社法

第四編 社債

第一章 総則

(社債券を発行する場合の社債の譲渡)
第六百八十七条 社債券を発行する旨の定めがある社債の譲渡は、当該社債に係る社債券を交付しなければ、その効力を生じない。

解説

趣旨

通常の債権譲渡は、当事者間(譲渡人と譲受人の間)の意思表示のみによって成立します(民法466条1項参照)。借用書などの証書を、譲渡人から譲受人に引き渡すことは、債権譲渡の成立要件ではないのが原則です。

社債も債権の一種ですので、社債の譲渡は当事者の意思表示のみによって成立するのが原則です。

ただし、社債は流通証券(流通を目的とする有価証券)です。つまり、社債は、権利の移転(社債の譲渡)が頻繁に行われるのが前提です。当事者の意思表示のみによって社債の譲渡が成立するとなると、真の権利者(社債権者)は誰か分かりづらくなります。これは、社債の流通の妨げにつながり、社債は流通証券としての役割を果たすことができません。

そのため、社債券を発行する場合には、社債の譲渡に社債券の譲渡を必要とすることにより、真の権利者(社債権者)は誰かが明らかになりますので、社債は流通証券としての役割を果たすことができます。

社債の譲渡方法

社債券が発行されない場合、社債の譲渡は、当事者の意思表示のみにより効力が生じます。なお、現在の会社法の下では、社債券は不発行が原則です(会社法676条6号参照)。

それに対し、社債券が発行される場合は、社債の譲渡は、当事者の意思表示に加え、社債券の譲渡が行われることにより効力が生じます。理由は、上記の「趣旨」の項で述べた通りです。

「社債」の意義

社債とは、会社法の規定により、会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、会社法676条各号に掲げる事項(募集社債に関する事項)についての定めに従い償還されるものをいいます(会社法2条17号)。

自己新株予約権の処分に関する特則

会社法687条の規定は、自己新株予約権付社債の処分による当該自己新株予約権付社債についての社債の譲渡については、適用されません(会社法256条4項)。

参考文献

高橋美加・笠原武朗・久保大作・久保田安彦(2016)『会社法』弘文堂

坂井芳雄(1996)『手形法小切手法の理解』法曹会

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