商法 >> 第二編 商行為 >> 第四章 匿名組合
(匿名組合契約)第五百三十五条匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。
解説
匿名組合契約について
匿名組合契約において、営業する者を営業者、出資する者を匿名組合員といいます。
第三者が匿名組合と営業上の取引を行う場合、営業者と取引することになります。取引時に、第三者に匿名組合員の名前が開示されることはありません。
匿名組合契約と類似の制度として、民法上の組合契約と会社法上の合資会社があります。
利益分配
匿名組合契約では、営業者は匿名組合員に対してその営業より生ずる利益の分配をしなければなりません。これは特約によっても排除することはできません。
契約に利益を分配する旨の規定が含まれていない場合、その契約は民法上の金銭消費貸借契約に当たる可能性が高いです。
利益分配の基準
利益分配の基準は、特約がないときは出資の割合によります(民法674条1項の類推適用)。
利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定されます(民法674条2項の類推適用)。
営業者の出資
商法には、営業者の出資についての規定はありません。
学説では、営業者が営業の対象となる営業に利用する財産や労力を評価して、計算上出資額に準じて取り扱われる、と解しています(大隅健一郎『商行為法』)。
実務では、匿名組合契約書に、営業者が受け取る報酬や管理手数料に関する規定を盛り込むことで、利益分配に関する紛争を防止することが通常です。
試験対策の勉強のポイント
短答・択一式試験
司法試験(予備試験)、法科大学院入試、公認会計士試験、司法書士試験、行政書士試験等の法律資格試験での出題にそなえて、学習しておきたい内容はこちらです。
- 匿名組合契約は、次の2つを約することによって効力を生ずる契約です。
- 匿名組合員が営業者の営業のために出資をすること⇒匿名組合員の義務
- 営業者の営業から生ずる利益を匿名組合員に分配すること⇒営業者の義務
(最終更新日:2018年6月3日)
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