工場抵当法解説

工場抵当とは

工場抵当(広義の工場抵当)とは、工場に対して設定する抵当権である。

工場抵当(広義の工場抵当)は、次の2種類である。

  • 狭義の工場抵当…工場に属する土地又は建物に抵当権を設定すること。
  • 工場抵当財団…1個又は数個の工場につき工場財団を設定し、その工場財団を目的として抵当権を設定すること。

工場とは

工場抵当法において、工場とは、営業のため物品の製造もしくは加工または印刷もしくは撮影の目的に使用する場所をいう(工場抵当法1条1項)。

営業のため電気もしくはガスの供給または電気通信役務の提供の目的に使用する場所は、工場とみなされる(工場抵当法1条2項前段)。

営業のため放送法にいう基幹放送または一般放送(有線電気通信設備を用いてテレビジョン放送を行うものに限る)の目的に使用する場所も、工場とみなされる(工場抵当法1条2項後段)。

狭義の工場抵当

狭義の工場抵当とは、工場の所有者が工場に属する土地又は建物に抵当権を設定することをいう。

工場の所有者が工場に属する土地の上に設定した抵当権は、建物を除き、その土地に附加して一体を成す物およびその土地に備え付けた機械、器具その他工場の用に供する物に及ぶ(工場抵当法2条1項本文)。

ただし、設定行為に別段の定めがあるとき、及び民法第424条の規定(詐害行為取消権)により債権者が債務者の行為を取消すことができる場合は、この限りでない(工場抵当法2条1項ただし書)。

工場抵当法2条1項の規定は、工場の所有者が工場に属する建物の上に設定した抵当権に準用される(工場抵当法2条2項)。

民法370条との関係

工場の所有者が工場に属する土地又は建物に設定した抵当権については、抵当権の効力の及ぶ範囲が、民法370条で定める範囲よりも広くなる。

民法370条本文

抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。

登記の手続

工場の所有者が工場に属する土地又は建物に対して抵当権を設定する場合においては、不動産登記法第59条各号、第83条第1項各号並びに第88条第1項各号及び第2項各号に掲げる事項のほか、その土地又は建物に備え付けた機械、器具その他工場の用に供する物であって工場抵当法2条の規定により抵当権の目的となる物を抵当権の登記の登記事項とする(工場抵当法3条1項)。

登記官は、工場に属する土地又は建物について抵当権の登記をするときは、職権で抵当権の効力が及ぶ物を記録した目録(機械器具目録)を作成することができる(工場抵当法3条2項)。

抵当権を設定する登記を申請する場合においては、抵当権設定の登記申請情報と併せて、機械器具目録に記録すべき情報を提供しなければならない(工場抵当法3条3項)。

 

工場財団

工場の所有者は、抵当権の目的とするため、1個又は数個の工場につき工場財団を設定することができる(工場抵当法8条1項前段)。

数個の工場が各別の所有者に属するときも、1個の財団を設定することができる(工場抵当法8条1項後段)。

工場財団は、工場財団登記簿に所有権保存の登記をすることによって設定される(工場抵当法9条)。

工場財団は、1個の不動産とみなされる(工場抵当法14条1項)。

 

工場財団の設定

 

 

工場財団に属する個々の組成物件を処分することの可否

 

 

工場財団の権利の制限

 

 

工場財団及び組成物件の所有権の移転の登記

 

 

工場財団目録の記録の変更

 

 

法令

工場抵当法(明治三十八年法律第五十四号)

工場抵当登記規則(平成十七年法務省令第二十三号)

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