民法第303条(先取特権の内容)の解説




条文

民法 > 第二編 物権 > 第八章 先取特権 > 第一節 総則

(先取特権の内容)
第三百三条 先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

改正履歴・改正予定

施行日が2015年8月1日以降の条文を掲載いたします。

2015年(平成27年)8月1日時点で施行されている条文

民法 > 第二編 物権 > 第八章 先取特権 > 第一節 総則
(先取特権の内容)
第三百三条 先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

解説

趣旨

本条は、先取特権の内容について定めた規定である。

先取特権の意義

先取特権とは、法律で定める一定の債権を有する者が、債務者の財産について、他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利である。

先取特権は、「債権者平等の原則」を破るものである。

先取特権は、法定担保物権である。

「債権者平等の原則」との関係

債権者平等の原則とは、同一の債務者に対し複数の債権者がいる場合、全ての債権者は平等に取り扱われなければならないという原則である。
具体的には、債務者が債務の全額を弁済することができないときは、債権額に応じた比例配当を受ける(各債権者はその債権額の割合に応じて弁済を受ける)ことになる。

しかし、債権者平等の原則を貫くと、社会政策的考慮や公平の原則などの観点から、適当でない場合がある。
例えば、未払の給料(給料債権)は、給料を受け取る従業員(使用人)の生活に関わるものであるから、他の債権よりも保護すべき債権であるといえる。

そこで、法律上保護すべき債権を有する者については、債権者平等の原則の例外として、他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利(先取特権)が認められている。

先取特権の性質

法定担保物権

先取特権は、当事者の意思に関係なく、民法その他の法律で定められた要件を満たせば、当然に発生する。
先取特権は、当事者間の契約(合意)によって発生する担保物権(約定担保物権)ではない。

付従性(附従性)

先取特権は、法律で定める一定の債権(被担保債権)の発生とともに成立し、その債権の消滅に従って先取特権も消滅する。

随伴性

先取特権の対象となる債権(被担保債権)が第三者に移転した場合は、先取特権もその第三者に移転する。
これは、先取特権と被担保債権は結びついていて、切り離すことが出来ないからである。

不可分性

先取特権者は、先取特権の対象となる債権(被担保債権)の全部の弁済を受けるまでは、目的物の全部について先取特権を行使することができる(民法305条民法296条)。
つまり、先取特権の対象となる債権(被担保債権)の全部につき弁済があるまで、先取特権は、目的物の全部に対して効力が及ぶ。

物上代位性

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる(民法304条本文)。この場合に行使することを、「物上代位」という。
ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法304条ただし書)。

先取特権に物上代位性が認められる理由

先取特権は、目的物それ自体を目的とする権利ではなく、先取特権の目的物の交換価値(担保価値)を把握しする権利である。ここでいう「把握」とは、「理解する」という意味ではなく、「しっかりつかむ」という意味である。
したがって、先取特権の目的物が売却等により「金銭その他の物」に変わった場合には、目的物の交換価値(担保価値)が「金銭」として現実化、あるいは他の「物」に移転したといえるので、「金銭その他の物」から優先弁済を受けることが出来る。
先取特権者は、目的物の交換価値を把握することで、債権回収を図ることが出来る。

物上代位が問題となる場合

一般の先取特権の場合は、物上代位は問題とならない。なぜなら、一般の先取特権の目的物は、債務者の総財産だからである(民法306条柱書)。
物上代位が問題となるのは、特別の先取特権の場合である。

先取特権の種類

先取特権は、一般の先取特権と特別の先取特権に分けられる。
さらに、特別の先取特権は、動産の先取特権と不動産の先取特権に分けられる。

一般の先取特権

一般の先取特権とは、債務者の総財産を目的物とする先取特権である。

一般の先取特権は、債務者の総財産について優先弁済を受ける権利が及ぶため、一般債権者(担保を持たない債権者)への影響が大きい。
そのため、民法上は一般の先取特権が認められる債権を特に保護されるべき債権に限定することで、一般債権者への影響を抑えている。

一般の先取特権が認められる債権は、次の4つの原因のいずれかによって生じた債権である(民法306条)。

  • 共益の費用(1号)
  • 雇用関係(2号)
  • 葬式の費用(3号)
  • 日用品の供給(4号)

特別の先取特権

特別の先取特権とは、債務者の特定の財産を目的物とする先取特権である。

特別の先取特権は、動産の先取特権(民法311条)と不動産の先取特権(民法325条)に分けられる。

動産の先取特権

特別の先取特権とは、債務者の特定の動産を目的物とする先取特権である。

動産の先取特権が認められる債権は、次の8つの原因のいずれかによって生じた債権である(民法311条)。

  • 不動産の賃貸借(1号)
  • 旅館の宿泊(2号)
  • 旅客又は荷物の運輸(3号)
  • 動産の保存(4号)
  • 動産の売買(5号)
  • 種苗又は肥料(蚕種(さんしゅ)又は蚕(かいこ)の飼養(しよう)に供した桑葉(そうよう)を含む。)の供給(6号)
  • 農業の労務(7号)
  • 工業の労務(8号)
不動産の先取特権

特別の先取特権とは、債務者の特定の不動産を目的物とする先取特権である。

不動産の先取特権が認められる債権は、次の3つの原因のいずれかによって生じた債権である(民法325条)。

  • 不動産の保存(1号)
  • 不動産の工事(2号)
  • 不動産の売買(3号)

民法に戻る

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク