商法第502条(営業的商行為)の解説




条文

商法 >> 第二編 商行為 >> 第一章 総則
(営業的商行為)
第五百二条
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
一 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
二 他人のためにする製造又は加工に関する行為
三 電気又はガスの供給に関する行為
四 運送に関する行為
五 作業又は労務の請負
六 出版、印刷又は撮影に関する行為
七 客の来集を目的とする場屋における取引
八 両替その他の銀行取引
九 保険
十 寄託の引受け
十一 仲立ち又は取次ぎに関する行為
十二 商行為の代理の引受け
十三 信託の引受け

解説

営業的商行為とは

営業的商行為とは、営業としてする場合に限り商行為となる行為をいいます。

「営業としてする」とは、営利の目的をもって反復継続して行うことをいいます。

商法502条は、営業的商行為として次の13種類を限定列挙しています。

  • 投機貸借とその実行行為(502条1号)
  • 他人のためにする製造または加工に関する行為(502条2号)
  • 電気またはガスの供給に関する行為(502条3号)
  • 運送に関する行為(502条4号)
  • 作業または労務の請負(502条5号)
  • 出版、印刷または撮影に関する行為(502条6号)
  • 客の来集を目的とする場屋における取引(502条7号)
  • 両替その他の銀行取引(502条8号)
  • 保険(502条9号)
  • 寄託の引受け(502条10号)
  • 仲立ちまたは取次ぎに関する行為(502条11号)
  • 商行為の代理の引受け(502条12号)
  • 信託の引受け(502条13号)

これらの行為は、絶対的商行為に比べて営利性が弱いことから、営利の目的をもって反復継続して行う場合にのみ商行為とされます。

ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、または労務に従事する者の行為は、営業的商行為に該当しません。例えば、小規模な賃仕事や手内職は、営業的商行為に該当しません。なぜなら、「加工に関する行為」(2号)にあたるとしても、経営規模が小さいことから、商法を適用する必要性に乏しいからです。

投機貸借とその実行行為(502条1号)

投機貸借とその実行行為とは、他に賃貸する意思(投機意思)をもって、動産または不動産を有償取得または賃借する行為(投機貸借)、またはその取得・賃借した物を他に賃貸する行為(実行行為)をいいます。

例えば、不動産賃貸業や物品賃貸業(リース業、レンタル業)がこれにあたります。

投機意思は、有償取得・賃借の時点であれば足ります。有償取得・賃借後に意思が変わって自分で使用したとしても、「投機貸借とその実行行為」に該当します。

501条1号と違い、502条1号には「有価証券」の文言が含まれていないことから、有価証券は「投機貸借とその実行行為」の対象にならないと解するのが通説です。

他人のためにする製造または加工に関する行為(502条2号)

他人のためにする製造または加工に関する行為とは、他人から材料の提供を受け、あるいは他人の資金で材料を買い入れて、その製造または加工を引き受ける行為をいいます。

製造とは、材料に手を加えて性質や用途が全く異なる物にすることをいいます。例えば、食料品製造業、繊維工業、機械器具製造業など各種製造業がこれに当たります。

加工とは、物の同一性を失わない程度に手を加えることをいいます。例えば、クリーニング業や修理業、染め物業(染色業)などがこれに当たります(染め物業についての判例は、大判大5・6・7)。

電気またはガスの供給に関する行為(502条3号)

電気またはガスの供給に関する行為とは、電気またはガスを継続的に供給することを有償で引き受ける行為をいいます。

条文上、水道や電波の供給は含まれておりませんので、これらは営業的商行為に該当しないことになります。

運送に関する行為(502条4号)

運送に関する行為とは、他人のために物品運送(物を移動させること)や旅客運送(人を移動させること)を引き受ける行為をいいます。

作業または労務の請負(502条5号)

作業の請負

作業の請負とは、不動産(家屋、道路、鉄道など)または船舶の建設を引き受ける行為をいいます。

土木業や建設業がこれにあたります。

労務の請負

労務の請負とは、労働者の供給(労働者供給)を引き受ける行為をいいます。

自ら労務を提供する行為は、「労務の請負」に含まれません。

労働者供給とは

労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものです(職業安定法4条7項)。

労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができます(職業安定法45条)。それ以外の場合は、労働者供給事業を行うことができません(職業安定法44条)。

出版、印刷または撮影に関する行為(502条6号)

出版に関する行為

出版に関する行為とは、文書・図画を複製(印刷)して販売・頒布することを引き受ける行為をいいます。

出版業者や新聞業者の行為がこれにあたります。

印刷に関する行為

印刷に関する行為とは、文書・図画を複製(印刷)することを引き受ける行為をいいます。

印刷業者の行為がこれにあたります。

撮影に関する行為

撮影に関する行為とは、撮影を引き受ける行為をいいます。

写真屋やカメラマンの行為がこれにあたります。

客の来集を目的とする場屋における取引(502条7号)

客の来集を目的とする場屋における取引(場屋取引)とは、公衆の来集に適する人的または物的設備を設け、来集する客の需要に応じて一定の設備を利用させる取引をいいます。

場屋取引の例としては、次のものがあげられます。

旅館、ホテル、宿泊所、公衆浴場、劇場、映画館、演芸場、各種スポーツ施設(ゴルフ場、野球場など)、動物園、水族館、遊技場(碁会所、パチンコ店、麻雀店、ゲームセンターなど)など

理髪店

判例は、理髪店について、請負または労務の提供に関する契約であって、設備の利用を目的とする契約が存在しないことから、場屋取引にあたらないとしています(大判昭12・11・26)。

ただし学説では、理髪店は場屋取引にあたるとする見解もあります。

両替その他の銀行取引(502条8号)

銀行取引とは、金銭または有価証券の転換を媒介する行為をいいます。「両替」は、銀行取引の例示です。

銀行取引は、金銭または有価証券を受け入れる行為(受信行為)と、これを需要者に給付する行為(与信行為)とがともに存在することを要します。したがって、貸金業者が自己所有の金銭を他人に貸し付ける行為や質屋営業の金員貸付行為は、銀行取引にあたりません(大判昭13・2・28、最判昭50・6・27)。

保険(502条9号)

対価を得て保険を引き受ける行為をいいます。

商法509条9号の「保険」は営利保険に限られ、相互保険や社会保険は含まれません。

寄託の引受け(502条10号)

寄託の引受けとは、他人のために物品の保管を引き受ける行為(すなわち、寄託契約)をいいます。

倉庫業や駐車場業がこれに当たります。

仲立ちまたは取次ぎに関する行為(502条11号)

仲立ちに関する行為

仲立ちに関する行為とは、他人間の法律行為の媒介(仲立ち)を引き受ける行為である。一定の商人のために取引の媒介を行う媒介代理商商法27条、会社法16条)や他人間の商行為の媒介をする商事仲立人(商法543条)は、仲立ちに関する行為を行う者に当たります。

仲立ちに関する行為は、媒介される行為が委託者にとって商行為である場合に限りません。商行為以外の法律行為の媒介(結婚の媒介、不動産売買の仲介)を行う者を民事仲立人といいます。

宅地建物取引業者(宅建業者)

宅地建物取引業者は、「他人間の商行為の媒介」(商法543条)をすることを業とする者ではないので、商事仲立人ではなく民事仲立人ですが、「仲立ちに関する行為」(商法502条11号)を営業とする者であるので、商人に該当します(最判昭44・6・26)。

取次ぎに関する行為

取次ぎに関する行為とは、自己の名をもって他人の計算において法律行為をすることを引き受けることをいいます。

「自己の名をもって」とは、権利義務は自己に帰属する、という意味です。

「他人の計算において」とは、経済的効果(つまり、損益)は他人に帰属する、という意味です。

自己の名をもって他人のために物品の販売または買入れをする問屋(商法551条)、自己の名をもって他人のために販売または買入れ以外の行為をする準問屋(商法558条)、自己の名をもって物品運送の取次ぎをする運送取扱人(商法559条1項)は、取次ぎに関する行為をする者にあたります。

商行為の代理の引受け(502条12号)

商行為の代理の引受けとは、委託者にとって商行為となる行為の代理を引き受ける行為をいいます。

締約代理商商法27条、会社法16条)の行為などがこれにあたります。

信託の引受け(502条13号)

信託の引受けとは、委託者から預かった財産の管理・運用・処分を引き受ける行為をいいます。

信託とは

信託とは、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理または処分およびその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法2条1項)。






商行為法の条文解説一覧はこちらです。

第二編 商行為

第一章 総則

第501条(絶対的商行為)
第502条(営業的商行為)
第503条(附属的商行為)
第504条(商行為の代理)
第505条(商行為の委任)
第506条(商行為の委任による代理権の消滅事由の特例)
第507条(対話者間における契約の申込み)
第508条(隔地者間における契約の申込み)
第509条(契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)
第510条(契約の申込みを受けた者の物品保管義務)
第511条(多数当事者間の債務の連帯)
第512条(報酬請求権)
第513条(利息請求権)
第514条(商事法定利率)
第515条(契約による質物の処分の禁止の適用除外)
第516条(債務の履行の場所)
第517条(指図債権等の証券の提示と履行遅滞)
第518条(有価証券喪失の場合の権利行使方法)
第519条(有価証券の譲渡方法及び善意取得)
第520条(取引時間)
第521条(商人間の留置権)
第522条(商事消滅時効)
第523条 削除

第二章 売買

第524条(売主による目的物の供託及び競売)
第525条(定期売買の履行遅滞による解除)
第526条(買主による目的物の検査及び通知)
第527条(買主による目的物の保管及び供託)
第528条

第三章 交互計算

第529条(交互計算)
第530条(商業証券に係る債権債務に関する特則)
第531条(交互計算の期間)
第532条(交互計算の承認)
第533条(残額についての利息請求権等)
第534条(交互計算の解除)

第四章 匿名組合

第535条(匿名組合契約)
第536条(匿名組合員の出資及び権利義務)
第537条(自己の氏名等の使用を許諾した匿名組合員の責任)
第538条(利益の配当の制限)
第539条(貸借対照表の閲覧等並びに業務及び財産状況に関する検査)
第540条(匿名組合契約の解除)
第541条(匿名組合契約の終了事由)
第542条(匿名組合契約の終了に伴う出資の価額の返還)

第五章 仲立営業

第543条(定義)
第544条(当事者のために給付を受けることの制限)
第545条(見本保管義務)
第546条(結約書の交付義務等)
第547条(帳簿記載義務等)
第548条(当事者の氏名等を相手方に示さない場合)
第549条(当事者の氏名等を相手方に示さない場合)
第550条(仲立人の報酬)

第六章 問屋営業

第551条(定義)
第552条(問屋の権利義務)
第553条(問屋の担保責任)
第554条(問屋が委託者の指定した金額との差額を負担する場合の販売又は買入れの効力)
第555条(介入権)
第556条(問屋が買い入れた物品の供託及び競売)
第557条(代理商に関する規定の準用)
第558条(準問屋)

第七章 運送取扱営業

第559条(定義等)
第560条(運送取扱人の責任)
第561条(運送取扱人の報酬)
第562条(運送取扱人の留置権)
第563条(介入権)
第564条(物品運送に関する規定の準用)
第565条 削除
第566条 削除
第567条 削除
第568条 削除

第八章 運送営業

第一節 総則

第569条

第二節 物品運送

第570条(物品運送契約)
第571条(送り状の交付義務等)
第572条(危険物に関する通知義務)
第573条(運送賃)
第574条(運送人の留置権)
第575条(運送人の責任)
第576条(損害賠償の額)
第577条(高価品の特則)
第578条(複合運送人の責任)
第579条(相次運送人の権利義務)
第580条(荷送人による運送の中止等の請求)
第581条(荷受人の権利義務等)
第582条(運送品の供託及び競売)
第583条(運送品の供託及び競売)
第584条(運送人の責任の消滅)
第585条(運送人の責任の消滅)
第586条(運送人の債権の消滅時効)
第587条(運送人の不法行為責任)
第588条(運送人の被用者の不法行為責任)

第三節 旅客運送

第589条(旅客運送契約)
第590条(運送人の責任)
第591条(特約禁止)
第592条(引渡しを受けた手荷物に関する運送人の責任等)
第593条(引渡しを受けていない手荷物に関する運送人の責任等)
第594条(運送人の債権の消滅時効)

第九章 寄託

第一節 総則

第595条(受寄者の注意義務)
第596条(場屋営業者の責任)
第597条(高価品の特則)
第598条(場屋営業者の責任に係る債権の消滅時効)

第二節 倉庫営業

第599条(定義)
第600条(倉荷証券の交付義務)
第601条(倉荷証券の記載事項)
第602条(帳簿記載義務)
第603条(寄託物の分割請求)
第604条(倉荷証券の不実記載)
第605条(寄託物に関する処分)
第606条(倉荷証券の譲渡又は質入れ)
第607条(倉荷証券の引渡しの効力)
第608条(倉荷証券の再交付)
第609条(寄託物の点検等)
第610条(倉庫営業者の責任)
第611条(保管料等の支払時期)
第612条(寄託物の返還の制限)
第613条(倉荷証券が作成された場合における寄託物の返還請求)
第614条(倉荷証券を質入れした場合における寄託物の一部の返還請求)
第615条(寄託物の供託及び競売)
第616条(倉庫営業者の責任の消滅)
第617条(倉庫営業者の責任に係る債権の消滅時効)
第618条から第683条まで 削除


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